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大学院留学時の就職活動の苦労と思わぬ転機
イギリスの大学院留学後、山崎さんは現地での就職活動に挑んだ。YMSで来た当初とは比べ物にならないほど、就職活動は大変だったという。LinkedInを活用して数多くの企業に応募し、そのプロセスでは何度も挫折を味わった。
「ものすごい数、応募しましたね。落ちるのが当たり前の世界で、かなりもがいていました」と語る山崎さん。就職活動は渡英直後の9月からスタート。初めから危機感を感じていた。応募数も非常に多く、インタビューにも複数回臨んだ。特に日系企業に関しては面接まで進むことが多かったそうで、JPモルガン日本支社からは内定も得た。
だが最終的には現在のイギリスのフィンテック企業に出会い、入社することができた。
その会社では自由な社風のもと、リレーションシップマネージャーとして、ビジネス開発や金融の知識を活かした業務に携わっている。具体的には、金利や財務に関わる計算を行いながら、クレジットアナリストの仕事も兼務しているという。
現在は就労ビザのスポンサーも得られ、入社から2年を超えて充実した日々を過ごしている。会社からの待遇も非常に良く、「本当にありがたい環境です」と満足げな表情を見せた。
イギリスでの就職戦略とCVの書き方の工夫
イギリスでの就職活動において、体験者は「集中攻撃型」の戦略を取った。行きたい企業を明確に定め、その企業に対して徹底的なアプローチを行ったという。具体的には、気になる企業を見つけたら、ヘッドハンターからの推薦だけに留まらず、自分からLinkedInで直接連絡を取ったりもしていた。実際、現在勤めている会社にも自らアプローチしたとのことだ。
この積極性が評価され、後にリクルーター経由でも同じ企業からオファーが届いたが、「自分から動いたこと」が最終的な採用の決め手だったと聞かされている。その理由は「ただ待っているのではなく、自ら行動して成果を取りにいく」といった営業・ビジネスデベロップメント的なスキルが求められるポジションだったからだ。
この会社から内定が出たのは、9月末から10月初め頃。ちょうど大学卒業後すぐのことであり、就職活動自体は卒業前から始めていた。留学してすぐの9月から活動を始め、1年間かけて面接やCVのアップデートを繰り返していたという。
なお、CVのアップデートにも独自の工夫がある。イギリスでは日本のようにネガティブな情報をそのまま記載する形式は受け入れられづらい。たとえば、「私は計算が遅いです」といった表現はNGとされる。代わりに、短所を述べたうえで、それをどう克服したか、具体的な対策や成果を加えて記述することで、ポジティブな評価につなげる書き方を意識していたという。
イギリスでの就職を目指した際、山崎さんはまず現地の文化や価値観を徹底的に学ぶことから始めた。特に「自分が一番の候補者であることをアピールする」というマインドセットは、イギリス人のパートナーや現地の友人を通して知ったという。
見た目の印象も重視される環境の中で、彼は「日本人は華奢に見られがち」という点に注目。自信を持って自己アピールできるよう、ジムに通うことも日課に取り入れ、身体的な面も含めて自己磨きを徹底した。
その背景には、「イギリスに残って働く」という確固たる覚悟があった。高額な留学費用に対して、日本で就職しても回収できないと判断したため、卒業時には「やるしかない」と気合いを入れて行動を開始。CV(履歴書)のアップデート、転職活動、面接の準備まで、すべてに全力を注いだ。
結果的に無事内定を受け、現在はイギリスで2年以上のキャリアを積んでいる。転職活動も気合いで乗り越えたと振り返る彼だが、今では現地のビジネス文化にも馴染み、「キーパーソンを通してトップダウンで交渉を進める」イギリス式の仕事の進め方に大きな学びを感じているという。経験を重ねる中で、実際のパフォーマンスでも結果を出しつつ、自身が希望していた生活を実現している。
YMSから始まったイギリス金融キャリア
山崎さんは、現在イギリスの企業で働いており、自分の裁量で仕事を進められる環境に大きな満足感を感じているという。出張に関しても、自らの判断で「このイベントに参加する」と決めて申請すれば、特に厳しい確認もなく渡航できる点が非常にありがたいと語る。
報酬面では、出張アロワンスがあり、その費用を使って日本へ年5回ほど出張する機会もあるという。こうした柔軟な出張制度も、仕事の自由度の高さを物語っている。
給与面では、入社当初の年収も2年で約15%の昇給を実現している。加えて、株式報酬などもあり、金額面でも決して悪くない待遇に満足しているという。
このようにキャリア面でも収入面でも充実した日々を送る山崎さんだが、そこに至る大きな転機となったのがYMSの取得だったという。「正直言って、反対に日本で思い描くキャリアに進むのは難しく感じていた。実際、いくつか希望の会社も複数受けたが、うまくいかなかった」と振り返る。しかしYMSを取得したことで、「海外で英語を使って働いた経験」や「イギリスでの金融経験」が得られたことが、今のキャリアを築く礎になったのだ。
「海外企業に就職するのであれば、日本での職務経験だけでは難しい。海外企業にアピールできる“海外での経験”を詰めるという意味でもYMSは非常に有効だった」と語る山崎さん。現在の職場は、働き方にも自由度が高く、YMSで得た経験が今の環境を引き寄せる強力な武器になったことは間違いないようだ。
海外経験とガッツが評価されたイギリス就職
イギリスでの就職において、自ら積極的にアプローチをしたことが転機になったと話す山崎さん。特に、CVやインタビューで何が評価されたかを振り返ると、「海外経験とガッツが決め手だったと思います」と語る。
「正直、銀行に5年勤めてるような人がいれば、そっちが採用されると思います。でも僕の場合は、MBAを通じて得たガッツや、イギリスでの生活経験が評価されたんじゃないかと感じています」と続けた。
実際、山崎さんの周囲でも、決算書分析などの専門的な経験が豊富でなくとも、イギリスのムーディーズなどで働いている人がいるという。共通するのは「タフさ」や「ガッツ」、そして異文化環境に飛び込む勇気だった。
「イギリスの企業は、スキル以上にカルチャーフィットを重視していると感じます。採用前のスクリーニングを通過したら、あとはその人の熱意やオーナーシップが重要。今の会社も、そういう部分を見ていると思います」。「自主性があって、チームにどう貢献できるかを考えて動ける人が評価されます」と語った。
ただし、実際に入社してからの道のりは決して平坦ではなかったという。「最初は馴染むのに苦労しました。カルチャーも日本とは違いましたから。でも、会社側が本当に良くしてくれて、ディナーに招いてくれたり、たくさん対話の機会を設けてくれたりしました」と振り返る。
イギリス企業で働く上で重要なのは、自分の存在価値を積極的に示していく姿勢。高い年収に見合うパフォーマンスが求められる中でも、山崎さんは持ち前のガッツで前向きに乗り切ってきた。
イギリスで働き始めた当初、最も苦労した点は長時間労働だったという。所属する企業は国際的な業務を扱っており、ロンドンにいながら、日本、アメリカなど複数の国と連携しながら仕事を行う。そのため、時差も考慮した働き方が求められ、自然と勤務時間が長くなる状況にあった。
特に最初の時期の努力が評価され、周囲の同僚たちは積極的にサポートしてくれた。新しく入社した人の定着率が職場文化において重視されている環境だったこともあり、周囲が「挨拶を組んでくれる」など、ウェルカムな雰囲気があったことは大きな励みになったという。
現在の企業に入社する際、日本人というバックグラウンドがプラスに働いた。もともと日本語スピーカーの人材を求めていたポジションがあり、その枠を獲得できたことで、入社のチャンスを得た。
スタート時は「Graduate Visa」で働いており、およそ1年後に「スキルドワーカービザ」へ切り替えた。こうしたビザのスムーズな移行も、継続的な雇用と実績があってこそ実現できたことだった。
キャリアの次なる展望は起業
今後のキャリアについては、現在の会社で成果を出すことを第一に考えつつ、将来的には自ら起業も目指しているという。その構想には、これまで関わってきたフィンテック領域のノウハウが活きている。
現在の会社では、主に海外のパートナーと協業してプロジェクトを進めているが、日本国内でもこうしたテクノロジーを活かせるビジネスモデルを構築し、日本の企業や銀行と連携する形でサービスを展開していきたいと考えている。
「国際的なやりとりは面白くもあるが、効率面で難しさもある。だからこそ、日本国内で完結できる仕組みを作ってみたい」と、リアルな課題認識と実行プランを語ってくれた。
彼は、イギリスでのYMSを経て、今では将来的な起業も視野に入れながら、多様な国での生活を柔軟に考えているという。特定の場所に縛られず、例えばリトアニアやインドネシア、シンガポールといった国々で過ごす選択肢も念頭に置いているそうだ。
こうした考え方にたどり着いた背景には、YMSとしてロンドンで過ごした経験がある。実際に働く中で、自分の上司が企業経験を経て起業に成功している姿を間近に見たことが、大きな刺激になったという。もしその上司がいなければ、自分の中で「起業」という選択肢が現実的になることはなかったかもしれないとも語っていた。
海外挑戦に迷う人へ伝えたいメッセージ
最後に、これからYMSで渡英を考えている人たちへのアドバイスとして、「世界を広げよう」と語ってくれた。キャリアを軸に見ても、失敗しても良いからまずは行動してみるべきだという。そのうえで、ただ何となく渡航するのではなく、「英語を学びたい」「海外で人と出会いたい」といった自分なりの明確な目標を持つことが大切だと強調する。
「目標があったからこそ、自分は動けた」と自信をもって話すその姿には、自分自身と向き合いながら未来を切り拓こうとする確かな意志が感じられた。
「海外に少しでも興味があるなら、もうやるしかない」と語る彼は、自ら決めた目標に対して真っ直ぐに向き合うことの大切さを繰り返し強調していた。運も必要だが、それ以上に大事なのはそのタイミングで努力すること。「チャンスは確実に存在する」と話す彼の言葉には、経験に裏打ちされた説得力があった。
「やると決めたなら、やるだけ」――迷っている誰かの背中を押したいという思いが、ひしひしと伝わってきた。

